ΔKTR
ブラック
boogieidol
DJサンバード
firedrill
Katakura Mode
una (after7: 声優レアグルーヴ)
古町MOI
fm
2週間前の開花予報は季節外れの寒波に見舞われて大外れ、僕のデートプランは見事に台無しだ。久しぶりに晴れた休日の武蔵野公園の桜はまだ六分咲きといったところ、満開の桜並木のトンネルは僕たちを出迎えてはくれなかった。
「この辺でいいかな?」
「うん。」
僕たちは広場が見渡せるベンチに腰を下ろすと、カノジョの手作りホットサンドとライトビールで一杯始めた。
「こうやって外でゆっくり話すのは初めてだね。」
「そうね、なんか変な感じ。」
「最近スポーツジムの調子はどうだい?」
「この前ルームランナーで20Kmも走っちゃった!自己ベスト更新したよ!」
「それは凄い!僕も…」
ブーーーーーーーーーーーン。
エンジン音を響かせながら公園の近くの飛行場からセスナ機が飛び立ち、僕たちの頭上を横切る。
僕はトークを邪魔された事にムッとしながらカノジョを見ると、カノジョは目を輝かせながらセスナ機を夢中で目で追っていた。
スポーツジムで会うカノジョとは違う表情を見せるカノジョに、僕はドキドキした。
ぎこちない会話が続く。
ちょっと気まずい沈黙が訪れる度に、僕は勢い良くライトビールを煽った。
「あのセスナ機、どこへ飛んで行くのかな?」
「え、あのセスナ?東京の離島、そう、日曜島とかへ飛んで行くらしいよ。」
「東京に島なんてあったの?」
昨年の春に東京へ出てきたカノジョは静かなリゾートアイランドの事を知らなかったようだ。
「そうだ、今度のゴールデンウィーク、あのセスナ機に乗って日曜島へショートトリップなんてどうだい?温泉があるらしいし、美味しい魚を食べて…」
ブーーーーーーーーーーーン。
僕たちの会話を遮るタイミングで、また一機、セスナ機が飛んで行く。
「いいわね!楽しそう!」
エンジンの音に負けないくらいの大きな声に、僕はまたドキドキした。
僕のまだ知らないカノジョと、カノジョのまだ知らない僕。
今日最後のセスナ機は淡い桜色に染まる春の空へと消えていった。
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合い言葉は、ナイスジャスコ!